宇田川宣人教授退任記念によせて

九州産業大学 芸術学部長・美術館長 釜堀 文孝
九州産業大学大学院 芸術研究科長 松永 洋子

 この度、芸術学部美術学科、宇田川教授の定年退任に伴い、退任記念展を本学美術館及び芸術学部アートギャラリーにおいて開催できますことは本学にとりまして誠に慶びとするところです。

 宇田川教授は芸術学部開設まもない昭和46年4月に本学に赴任して以来、44年にわたり、美術学科において、デッサン、油絵、造形表現などを担当し、卒業ゼミからは多くの画壇、教育界で活躍する人材を育成してきました。例えば小磯良平大賞展、フィレンツェ賞展、昭和会賞などのグランプリ受賞者達や他の公募展の受賞者など、また現在、福岡市の最初の小・中一貫校の校長や、福岡県高文連の委員長など、社会において重要な役割を果たしています。更に大学院芸術研究科においては博士後期過程の指導教授として8名の博士(芸術)の学位を授与し、大学院修了生達が我が国はもとより、フィリピン、インドネシア、韓国などで大学教授や講師として活躍しています。

 宇田川教授の絵画創作研究における専門領域は現代絵画であります。ニューアーツプログラム(米)、サザンクロス大学(豪)、ペンシルバニア大学(米)などの客員芸術家を務め、また28年間にわたりアジア美術家連盟に役員として携わり、各国で開催されるアジア国際美術展のリーダーシップをとり、グローバルな美術活動を行ってきました。モダン、ポストモダン、イズムではない新しいアートと変遷した戦後の現代美術の流れの中で、真摯に社会や人々や自分と向き合い、切り拓いてきた絵画表現に注目し、宇田川芸術の世界をお楽しみください。

 更に宇田川教授は芸術学部長、及び大学学長の任を務め本学の発展に寄与致しました。在任中の業績としては、美術館、柿右衛門様式窯、語学教育センター、総合情報センター、臨床心理センター、学術研究推進機構等の設置や開設、また情報科学部、大学院情報科学研究科、バイオロボティクス学科、臨床心理学科などを開・増設を行い、フレッシュマンスカラシップなどの学生の奨学金の大幅充実や硬式野球部などの強化サークル指定、学生の授業評価制度などを導入しました。また学際的教育研究を推進し、高齢者医療や景観プロセスの共同研究において、文科省の2つの「学術フロンティア推進事業」の採択や柿右衛門様式陶芸研究センタープログラムが21世紀COEプログラムに採択されるなど、九州産業大学の教育研究の飛躍に貢献されました。教授に対し、心から感謝申し上げますとともに、そのキャンパスに立つ美術館にぜひご来場頂き、退任展をご観覧頂ければ幸福と思います。