第27回アジア国際美術展

 28年目を迎えるアジア美術家の絆 一バンコクから金門島一

アジア美術家連盟日本委員会代表 宇田川 宣人

 アジア美術家連盟は、1985年から毎年各国持ち廻りでアジア国際美術展を開催し、次回の金門島展で28回目を迎えようとしている。この展覧会は、日・韓の前代表者であった故秋吉資夫氏と故リュウ・キョンチェイ氏により1972年に創設された日韓交流美術展を継承するかたちで、1985年に第1回展が韓国、日本、台湾が参加して、ソウル国立現代美術館で開催された。以来、参加国を拡大しながら開催し、今年の1月の第27回バンコク展ではレジデンス参加国を合わせて21ヶ国地域が参加し、名実共にアジアを代表する現代美術展に成長することができた。しかし、そのバンコク展開催中の2月6日に日韓交流美術展発足時から親身になってご指導をいただいてきた谷口治達アジア美術家連盟顧問を失った。これまでの先生の当連盟へのご貢献、ご功績に対し心から敬意と感謝を表し、ご遺志を無にすることのないようにアジア現代美術の振興発展に努力する決意を新たにした。この国際展の出発当初は、アジア諸国間の経済格差や国際関係も複雑な時代であった。経費負担は格差に応じて補い合い、また国際間の政治的緊張にはモダンアーティストとしての理念を返映し、政治から一定の距離を置き、造形美の追究に徹しながら、アジア各国・地域の文化の伝統と特徴を相互に理解、尊重し合い、相互啓発を行い、清新にして豊かなアジア現代美術の創造を図ってきた。しかしながら、民間ベースの国際展のため、開催や参加費用の捻出、国際間の壁など、多くの困難に立ち向かわなければならなかった。この長年の厳しいアジア国際美術展の道程を車の両輪のように支え、育て、今日の隆盛に導いた人達は、故・谷口治達顧問と安永幸一顧問であり、またパトロンの皆様と福岡を中心とした美術・文化・報道関係者である。ここに改めて心から感謝申し上げる。

 今回の第27回バンコク展は「アジアの土壌-無垢なる大地の微笑み」のテーマに沿って「アジア人を産んだ母なる大地」に包まれるようにおおらかに、ゆったりとタイ式のオープニング行事が執り行われた。ご参加いただいた安永顧問にはタイ国の代表作家を網羅した展示構成やイラン、アフガニスタン、ラオス、ミヤ一などの新参加国の充実などにも高い評価をいただいたところである。代表者会議では、次回開催の台湾委員会のプレゼンテーションが「バンバンバン」と爆撃機の号音の光景から始まり、会場に緊張が走った。次回開催の金門島は中国大陸に入り込んだ台湾の領土で、かっては中国と台湾との戦闘地であった。その地での開催には昨年のソウル展で台湾と中国の代表が相談して、アジアの国際平和を象徴する展覧会を願って企画に到った経緯がある。これまでの台湾で開かれた3回の国際展に、中国委員会は出品を見合わせていたので、今度こそ無事出品できることを願うと共に、台湾委員会リーダーシップと各国・地域委員会の協力により、金門島展が成功し、新たなアジア現代美術の振興と国際友好親善に寄与できることを祈念したい。


第27回アジア国際美術展 タイ/バンコク大会(アユタヤ世界文化遺産視察・交流会)


第20回アジア国際美術展(フィリピン アヤラ美術館 2005)-